胃炎による胃粘膜の萎縮が進めば進むほど胃がんリスク上昇

胃炎の発症と治癒を繰り返すうちに、長い年月を経て胃粘膜の細胞が少しずつ少なくなり、やがて胃粘膜自体が薄く、萎縮していきます。今回、スウェーデンの研究により、胃粘膜の萎縮度が進めば進むほど、胃がんの発症リスクが顕著に高くなることが具合的な数値によって示されました。

人は胃炎の発症と治癒を繰り返しながら生きている

現代人には避けることのできないストレスをはじめ、アルコールやコーヒーなどの嗜好品、唐辛子などの香辛料、あるいは単に熱すぎるものや冷たすぎるものなどによる刺激、喫煙習慣、鎮痛剤や風邪薬などの薬剤による副作用、インフルエンザなどの感染症、そして最近話題のピロリ菌の感染などなど・・・胃炎は実に様々な原因で起きる胃粘膜の炎症です。

これらの原因を見ていただけるとわかる通り、胃炎は日常的にとても起こりやすい病気です。それが胃痛として顕れる場合もあれば、不快感すら感じずに治まってしまう場合もありますが、「人は胃炎の発症と治癒を繰り返しながら生きている」と言っても過言ではないと言えます。

胃炎から胃がんに至る一般的なプロセス

但し、この胃炎がそのまま胃がんに直結しているわけではありません。胃炎の発症と治癒を繰り返すうちに、長い年月を経て胃粘膜の細胞が少しずつ少なくなり、やがて胃粘膜自体が薄く、萎縮していくのですが、この胃粘膜の萎縮が、胃がんの発症に関連していると考えられています。

つまり、胃粘膜の萎縮をともなわない慢性的な胃炎である「慢性胃炎」から、やがて胃粘膜の萎縮をともなう「萎縮性胃炎」に発展し、さらに胃粘膜の上皮組織の変質をともなった「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)」、そしてその変質がさらに進んで上皮組織が異常な形態となった「異形成」へと進む・・・ このような胃粘膜の変化は、胃の入口に当たる噴門部以外の発がんに至る一般的なプロセスと考えられてきました。

そして、この一連のプロセスの開始段階でピロリ菌が深く関与していること、ピロリ菌が胃がんの大きな危険因子であることはよく知られています。ピロリ菌の感染から慢性胃炎を繰り返し、それが萎縮性胃炎に繋がって、やがて胃がん発症に至る具体的なプロセスについてはコチラの記事がわかりやすいです。

胃粘膜の萎縮度による胃がん発症リスク

ところが、前述の慢性胃炎や萎縮性胃炎などの前癌病変のそれぞれの段階、つまり、胃粘膜の萎縮度ごとにおける胃がんリスクが、実際にどの程度なのかについては、これまでの研究では一致した結論は出ていませんでした。

そこで今回、スウェーデンの研究チームは、1979~2011年までに内視鏡検査と生検を受けた約30万人のデータを対象にして、平均10年間に渡って胃粘膜の萎縮度ごとの胃がん発症率を調査したのです。その注目すべき調査結果は次の通り。

臨床的な必要性により内視鏡検査と生検を受けた人のうち、その後胃癌を発症した患者は、正常粘膜群では256人に1人、非萎縮性胃炎群では85人中1人、萎縮性胃炎群は50人中1人、腸上皮化生群は39人中1人、異形成群では19人中1人だった。

つまり、胃粘膜が正常な状態から、胃粘膜の萎縮をともなわない慢性胃炎に始まり、萎縮が認められる萎縮性胃炎、さらに萎縮が進んだ腸上皮化生、そして異形成へと胃粘膜の萎縮度が進めば進むほど、その後に胃がんを発症する確率が顕著に高くなっていることが、実際の数字でもって具体的に示されたわけです。

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